蝶になったあの日から

乙女心と秋の空 / HEAVY MENTAL HERTZ

 目覚めると薄明かるい。カーテンを開き、いつものように窓の外を見ると、そこに家や駐車場や小さな小屋など見慣れた景色はなかった。道路一本隔てた向こう側は南洋の島国の水上生活を想起建物と人々。ろくに屋根もない無数の小さな浮島があり、そこに居る人たちは一様に困ったという表情を浮かべていた。
 僕は慌て母を呼ぶ。すると母は何も不思議ではないていったふうに、一夜にして変わり果てた町並みについてこう語った。
「向こう側は再開発の地域に指定されていて、前から立ち退き要求が出されていたんだけど、遂に強行手段に出たみたい。仕方ないね」
 その言葉で納得した僕は彼らの亊など思いやらず、再開発となればここの地価があがり、我が家の零に近い資産価値も上がるだろう。充分な値がついたら売り払って引っ越そうよ、と両親に提案した。両親も乗り気だ。僕らは再び窓の外を見下ろした。