蝶になったあの日から

乙女心と秋の空 / HEAVY MENTAL HERTZ

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近江舞子:始まりました。第一回は、なんと既にプライム会員無料期間が終了してしまった『ブラックレイン』です。
ここでは、映画鑑賞の道の先輩である踊る猫さんに、後輩である僕、近江舞子が学びながら語り合っていきます。
では、よろしくお願いします。


踊る猫:よろしくお願いします。なんか緊張しますねw


近江舞子:そうですね。僕は自分を後輩と仕立てることで予防線を張っている気がします。


踊る猫:私はそんなに観ないですよw 観る時期が来ればそれなりに観るんですが、最近はちょっと観ない時期に入ってしまったので、『ブラック・レイン』もなんだかんだで一回しか観られていないので何処まで語れるか自信はないですが……。

・あらすじ
汚職に塗れたアメリカの警察官が、たまたま現地のレストランで日本のヤクザの犯行を逮捕し、はるばる大阪まで行きそのヤクザの身柄を渡したが、実はそれはニセの警察官(つまりヤクザの一味)だった。まんまと騙されたアメリカ人警察官ふたり組は日本の警察官と協力して行方を追う……


近江舞子:いきなりなんですが、この『ブラック・レイン』。題名がそれほどメインテーマになっていなような気がしたのですが、先輩はどうお考えですか?


踊る猫:そうですね。難しい話になるんですが、日本とアメリカの関係が深く絡んで来るように思います。アメリカは日本に原爆を落とした国じゃないですか。それで「黒い雨」を降らせた。戦後は日本が高度経済成長を果たして、アメリカを脅かすようになった。アメリカ人からすれば日本人は「エコノミック・アニマル」じゃないかと、それこそ「カネ」で動く国民じゃないか、と思われていた。そんな現象をイギリス出身のリドリー・スコットが興味深く観察してこの映画を撮ったのかな、と思いましたね。


近江舞子:難しいですね。ヤクザはもちろん、高倉健演じるマサも任侠であるということでしょうか。


踊る猫:そうですね。義理を重んじるというか、ヤクザと同じようにひたすら忠義を尽くしている人物のように語られてたと思います。


近江舞子:僕が思ったことをつらつらと書きますね。
・変なニッポンが出てこなくてよかった
バイクがかっこいい
・『踊る大捜査線』のネタ元が見られてよかった
てな感じです。


踊る猫:『踊る大捜査線』は観てないのでなんとも言えないのですが、個人的にはあの日本は結構シュールだと思いましたけどw 確かクラブの柱に「諸行無常」と書かれたりしていたと記憶しています。ただ、そのあたりの細かいところではなく、人物の描き方としては高倉健松田優作も尊重されていて、単純に差別的に描かれていないところが良いかなと思いました。


近江舞子高倉健も松田勇作もかっこよかったです。先輩がTwitterで触れられていましたが、高倉健レイ・チャールズの歌を歌うところ、演技じゃなく本当に照れているように見えました。


踊る猫: そうですね。あれは「含羞」と呼ぶべきものが滲み出ていたと思います。あそこで分かり合えなかった人同士が分かり合える切っ掛けになるんですよね。そのあたり巧いな、とは思いました。


近江舞子:なるほど。そんな意味もあるのですね。


踊る猫:ただ、矛盾するんですがそのあたりは巧いんですけれど、やや話としては御都合主義的かなとも思いましたね。あんなヤマカンが当たるものか、と思いましたw そのあたりもマイケル・ダグラスのハチャメチャさを活かす効果が出てるのかなとも評価出来るのですが。


近江舞子:御都合主義的。そう言われるとそうだなと思います。
ところで、製作陣は何を思って、日本人側に高倉健と松田勇作という二人の名優を起用したのでしょうね。単に人気があるから使ってみようと考えたとも思えない、バッチリな配役だと思います。


踊る猫:そのあたりは私にも分からないですが、確かに高倉健も凄まじかったですが松田優作も良い味出してましたね。サディスティックな迫力がありました。あれが遺作なんですよね。そう思って観ると感慨深いものがあります。


近江舞子:終盤、その松田勇作とマイケル・ダグラスが泥まみれで殴りあうところありましたよね。あそこの最後のほうで下を見て尖っているものを見て終わる意味がわからなかったのですが。


踊る猫:あれは突き刺して殺そうと思えば殺せた(親友のアンディ・ガルシアを殺されてるわけですから、目には目を、という感じですね)。けれど敢えて殺さずに日本の警察に身柄を渡した、ということなんだと思います。


近江舞子:ああ、なるほど。
ちょうど、春アニメで「ばくおん!!」という「けいおん!」のパロディでバイクを題材にした作品を見ていたせいか、バイクのシーンが妙に気になりまして。その辺はいかがでしたか?


踊る猫:あのあたりも実は個人的にはシュールだと思ったですねw ヤンキーとヤクザ……確かに結びつかないではないかもですが……ただ、リドリー・スコット的にはマイケル・ダグラスに横方向に走らせるところを撮りたいという思いがあったから敢えてバイクを重要なものとして用いたのかな、と……あくまで推量ですが。


近江舞子リドリー・スコット監督というのは、ざっくり言うと作品に置いてどんな物事を好む監督なのでしょうか?


踊る猫:いや私も遠い昔『ブレードランナー』と『エイリアン』を観た程度なので、観直しが必要なんですけれど、画像というか画面の質感として冷ややかなものを好むのかな……そんな曖昧なイメージがあります。物凄く曖昧ですがw


近江舞子:作品名だけは知っています。有名な監督なんですね。


踊る猫:そうですね。私もこれに関しては何方かに教えを請いたいと思います。


近江舞子:総合的に考えて、『ブラック・レイン』は「名作!」と言えないまでも「佳作」だと思えるのですが、いかがでしょうか。


踊る猫:そうですね。私は Filmarks というサイトで 3.9点をつけました。個人的な基準点は 3.8点なので、それを上回るかな、という https//filmarks.com/detail/8520/19334709


近江舞子:“マイケル・ダグラスのドライヴィングのテクニックの冒頭での披露が、クライマックス近くで活かされることになる”
ここは流石に僕も気付きました。ああ、最初のあれはここで活きてくるのか、と。


踊る猫:そうですね。そのあたりは脚本として巧いから困るというw


近江舞子マイケル・ダグラスの盗癖(?)も最後に活かされていますよね。


踊る猫:そうですね。そのあたりも粋ですね。


近江舞子:僕の感想は出尽くしましたが、先輩が語っておきたいことは何かありますか?


踊る猫:そうですね……色々驚かされたところがあると言えばあります。自転車の集団、機動隊めいた警察、朝の市場……「ガイジン」から観た日本ってこういうものなのかな、と。ただ、さっきも述べましたけれどそういう風俗や脚本の面のアラを、名優たちが穴埋めしているかな、という印象を抱きました。観る切っ掛けを作って下さったことに感謝します。


近江舞子:いえ、こちらこそ。
事前にお伝えしていなくて申し訳ないのですが、今回は僕が決めたので、次回の鑑賞作品は、先輩に決めていただきたいです。思いつくものはありますか?


踊る猫:困ったな……鑑賞作品を決めるのは難しいですね。個人的に得意な(?)黒沢清氏の映画なんかどうでしょう。『ニンゲン合格』とか。もうご覧になっていると聞いたのですが、ダメでしょうか。


近江舞子:『ニンゲン合格』は未見です。


踊る猫:ああ、そうなんですね。個人的には好きな映画です。


近江舞子:では、また今月末くらいまでに鑑賞して、来月くらいに語り合いましょう。


踊る猫:そうですね。よろしくお願いします。ただ、黒沢氏の映画は結構人を選ぶというか、好みが割れる映画なので、相性が合わなければ申し訳ありません。あらかじめ謝っておきますw


近江舞子:自分の感性では選ばないであろう作品に出逢いたいので、大丈夫です。


踊る猫:そうなんですね。その精神は見習いたいです。私は興味の幅が狭いので。


近江舞子:では、今夜はこの辺で。


踊る猫:有難うございました。


近江舞子:ありがとうございました。