蝶になったあの日から

乙女心と秋の空 / HEAVY MENTAL HERTZ

厚手のロングカーディガン

 白くてもこもこしたフードと同素材のベルト付き。大判の赤とピンクの長いボーダーストールをぐるぐるに巻き付ける。その上に銀髪がゆれる。右手中指から赤い糸が垂れ下がって地に着いて延々と続いている。こちらからは背中しか見えないため表情は伺いしれない。くるぶしまでの黒いレギンス。足元は……裸足。
 ゆっくりと前進している。彼女は何処へ行くのだろう。何処から来たのだろう。
 晩秋の夕暮れ、噴水のある公園のベンチ。もう何度見たことか。しかし、彼女を正面から目にしたことはない。
 今日もバラを一輪、そっと地面に添え、手を合わせて僕は帰る。