彼はまったく変な男だ。
毎日飽きもせず米を食べ、周囲の人びとと決まった挨拶を交わし、似たような労働を繰り返し、と例には枚挙に暇がない。
こんなに退屈なことに耐えられるなんて、きっと狂人に違いない。
だから、嫌いな人間との関係もそつなくこなし、上っ面だけの社交も心を無くして取り組める。
恐ろしいことに誰一人としてその事実に気がついていないということだ。
だが、狂人はそうしていれば、それを信望していれば、道を踏み外さないと確信しているから、止めない。
狂人は、異質な存在が自らを脅かすとして、いつも排除しようと試みる。
「変だよ」。