朝、喫茶店で十年来の友人に一年ぶりに会った。
わたしが外で煙草を吸ってから中に戻るときに、彼女はコーヒーを待っていたのだ。
彼女は「これから仕事」だと言った。
二、三分だろうか。わたしは訊かれるままに近況を話した。
しかし、わたしは彼女のことを何も聞けなかった。
ただ単に、わたしが口下手なのが原因。
もうひとつ、あとから考えてみれば、彼女が真っ当に生きていてまぶしく、目を逸らしたかったのだと思う。
彼女には恩がある。
もう五年前になるだろうか、わたしが心身ともに最低だったときに、物理的にも心理的にも助けになってくれた。
あれから、恩返しができていない。
また彼女にあったときに言おう。
「あのときは、ありがとう」と。