蝶になったあの日から

乙女心と秋の空 / HEAVY MENTAL HERTZ

「雲」

 だいたい、夏の雲というものは威張っている。それは人々がすぐに思いつく、夕方の怒りをはらんだ、入道だけに限らない。朝から晩まで、大小さまざま、実に偉そうにしているのである。夜深くの空を想像していただきたい。見上げてみる。月や星たちを隠して、自分が主役である、そう振る舞っている。しかし、実際それは間違っていない。夏は雲のものである。雲ひとつで、すべてが決まる。これは過言ではない。人々は踊らされているのだ。光より影を創る存在のほうが圧倒的に強者で、必然、我々はそれに従わざるを得ない。生意気な小僧のたたずまいに一喜一憂してしまう。そんな雲は、誰に造られたわけでもなし、仕掛けを持っているわけでもなし。そこに意思は無い。意思が無いから、かえって余計に威張っている面持ちを見せるのだ。あゝ、雲には勝てない。