蝶になったあの日から

乙女心と秋の空 / HEAVY MENTAL HERTZ

お話

 雪が降っています。積もった白は土の茶色を隠し、アスファルトの黒色を隠し、向かいの家の屋根のねずみ色を隠し……。世界は一色に染まろうとしている。
 あれは冬桜。小さく、儚く咲いている。あなたみたいにはにかんで。存在することを恥じるかのようなたたずまい。
 まぶしいな。あまりにも景色は輝いている。夜まで待てば静まるだろうか。星屑を見たい。天に溶ける無数の流れ星たちを。
 今日という日は二度と訪れない。名前を呼んでください。生きていたという記憶を残す為に。わたしの名前は。