蝶になったあの日から

乙女心と秋の空 / HEAVY MENTAL HERTZ

九月二十日

 父方の祖父が亡くなったのは、わたしが十二歳のときだった。
 わたしの記憶の中で寝たきりだった祖父は、戦争に行ったという。そこで、足に銃弾を受け、悪くしたらしい。
 でも、だからといって、それ以来ずっと寝たきりのわけではない。祖父のあぐらの中に収まっているわたしが、写真に残っている。
 ちなみに祖母のほうは存命。母方の祖父母は、物心ついたころには、もういなかった。
 こんなことを振り返るのは、両親が確実に老いて、死に近づいていることに直面してしまったから。
 肌のシワとか髪の色とか。通院とか薬とか。
 自分が死ぬことは怖い。それより、親が死ぬことのほうがもっと怖い。
 受け入れる準備をしないと。