蝶になったあの日から

乙女心と秋の空 / HEAVY MENTAL HERTZ

祝福のない才能の発露を見いだして

 夜。見覚えのない都会の狭い路地を相棒の革の上着がよく似合う女性に先導されながら、四方八方、特に後ろに注意して全力で走る。そのときは我を忘れていた。僕は何者かたち複数名に追われている。判で押したような、まったくカーボンコピーの怪しげな連中、全身黒尽くめの男どもに。
 僕の肉体はちょっとやそっとでは壊れないようだ。相手もそれを承知でがんがん攻撃してくる。発砲や投石。相棒の助言もあり、人のいない広々とした自然の場所におびき寄せ到着。と、次々に襲い掛かられる。四方八方から容赦なく。僕は落ち着いて自分の特殊能力を解放した。すると、囲っていた敵さんたちはあっという間にバタバタと、仰向けやらうつ伏せやら色んな格好でのびる。
 こんなのばかりだ。もうずっと。僕はもっとこの力を公共の福祉に役立てたい。でも、頭の悪い僕にはどうすればよいのかわからない。それが悲しい。
 昨日、道に落ちていた空のペットボトルをためらいなく拾い、近くのお店のくずかごにさっと放る男子高校生を見た。あんなふうに自分のできることをやって、世の中を少しHAPPYにしたいんだ。