舞子:こんばんは。近江舞子です。さて、今回はめぼし影星さんの二回目、「先週あれ読んだよ」編です。
吉田知子『お供え』
- 作者: 吉田知子
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2015/04/11
- メディア: 文庫
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毎朝、何者かに家の前の「カド」にお供えを置かれ、身に覚えのないまま神様に祀り上げられていく平凡な未亡人。
山菜摘みで迷い込んだ死者たちの宴から帰れない女。
平穏な日常生活が、ある一線を境にこの世ならぬ異界と交錯し、社会の規範も自我の輪郭さえも溶融した、人間存在の奥底に潜む極限の姿が浮かび上がる七作品。
川端康成文学賞受賞
舞子:先に感想を言わせていただくと、「感想が難しい」ですね。
どの話も現実なのか錯覚なのか記憶なのか、何か境目がわからなくて視界がぐらつく感じがしました。
例えるなら、「夢」ですね。不条理なのに、細かいところが印象に残るという。
影星:そうなんですね……「夢」というのはまさにその通りだと思います。それも「悪夢」ですね。細かいところというのはその通りだと思います。今回自分でも読み返してみたんですが、以前にはお伝え出来なかったこととして自然の描写が非常に豊かだな、と。「感想が難し」かったというのは、なんか申し訳ないような……。
舞子:自然の描写。そうですね。植物の描写がやたら多い。あと、建築物についても。
影星:そうですね。建築物の描写もまさに細かいですね。袋小路にハマり込んでいくような恐怖を強く感じさせられます。
舞子:あとがきに当たる、「著者から読者へ」では、著者が如何に迷子であるかが語られていますね。我々はそれを追体験しているのでしょうか。
影星:そうですね。読み返してこれもまた思ったのは、登場人物がよく彷徨い歩く小説だな、と。それは山の中だったり、さっきも仰った建物の中だったりするわけですが、どんどん先が見えなくなる。迷子になるのってこんな感じだな、土地勘が働かない場所にいきなり放り出されたような、そんな気になりますね。
舞子:本当に彷徨いました。
ポイント1の「先が全く読めない不条理な展開で成り立っている」は通り過ぎてしまいましたね。ポイント2に行きましょう。
「縁というか親類縁者が関わっているという共通項がある」
これですね。わたしはあまりピンと来なかったので、影星さんは再読してどう思われたかを伺いたいです。
すみません。説明が足りませんでした。「血縁というか親類縁者が関わっているという共通項があることに気づかされます。血の繋がりが深く関係していることに気づかされるからこそ感じられる独自の息苦しさがある」
この「息苦しさ」の点ですね。
影星:ああ、ピンと来られなかったんですね。うーん……下品な話をしますけれど、講談社文芸文庫って価格が高目に設定されているので、ゆたさんとの収録を読ませていただいたこともあってエラいことになったなと思いました。それで読み返したんですけれど、個人的には本当にこれらの家族って「閉じている」なあ、って思うんですよ。親と子が、親戚同士が依存し合っているような関係というか……難しいな(´・ω・`)
舞子:唯一、「門」は感じました。「閉じ」た親戚関係。戸籍に支配されているような。
影星:そうなんですね。あれは一番色濃いですね。
舞子:前編に続いて私事になるのですが、来月、祖母の一周忌があるんですよ。祖母とわたしは血が繋がっていないんですよ。でも、同居はしていなかったものの、間違いなく家族でした。わたしは祖母が嫌いだったので、法事には出たくないんです。でも、「家族だから」、出ろと親がうるさくて。
影星:うーん……親戚の法事ってここ最近出たことないからなんとも言えないですね……喪服ももうサイズ違っちゃってるかもしれない……。
舞子:ポイント3に行きましょう。「土俗的な怖さ。梅干しと米飯の国で生まれ育った人が共感出来る感覚」。
これは、合点がいきました。外国で暮らしたことはありませんが、極めて日本を描いた日本の小説だな、と。
影星:そうですね。本当に、このニュアンスは英語や他の言葉では言い表せないものなんじゃないかなって思います。
舞子:表題作の「お供え」なんか特にそう思います。
わたしが一番楽しめたのは、「海梯」です。白倉由美っぽいと思いました。
一番、読みやすかったからというのもあります。
影星:白倉由美氏の作品はそんなに読んでないのでピンと来ないんですが、あれは一種のホラーとして上手く出来てるんじゃないかなって思います。相当に失礼な言い方になるんですが(お気を悪くされたら申し訳ありません)、確かに少女漫画的な要素はあるかな、と。
舞子:全然、失礼じゃないですよ。「少女漫画的」はぴったりな言葉だと思います。
腑に落ちます。
影星:ああ、有難うございます。「オサムの○○を愛している」の繰り返しに強くそれを感じさせられますね。あとはいとこ同士の仲睦まじい関係だとか……。
なんか、あまり近江さん的には盛り上がらなかったようで、さっきも申し上げたんですけれどなんか申し訳ないかなと思います(´・ω・`)
舞子:いや、わたしの語彙が貧しいだけです。
こんな手もアリなんだと、書き手目線で考えたりもして。
読み方というものをよくわかっていないのです。
先日も、『本を読むときに何が起きているのか』という本を買いました。
影星:ピーター・メンデルサンドという方の本ですね。読んでないですね……。
舞子:ご存知で。さすが。
影星:いや、今調べました(´・ω・`)
舞子:そうなんですか(笑)
話を戻して、盛り上がっていないことはないですよ。わたしのふにゃっとした感覚を、影星さんにうまいこと言葉にしてもらっています。だいたいがゲストに頼り切る企画ですので。
影星:ああ、だったら嬉しいですね。私もあれからヒマなもので『吉田知子選集』全三巻を読んでみたりして、確かにこの世界は言葉にするのは難しいだろうな、とつくづく思いました。『お供え』はその中でも比較的分かりやすい方だと思うので、寝かせて読めばまたなにか見つかるかもしれませんね……。
舞子:そうですね。通して二回読みましたが、また読んでみようと思います。
最後に、もう一度、お知らせや言っておきたいことなどがあれば、どうぞ。
影星:それが……前回もお話ししたんですけれど、特にないんですよ(´・ω・`) さっき近江さんは「書き手目線」の話をされましたけれど、私はもうすっかり小説を書くのは諦めてますね。「残念だ」と言われたりもしているのですが、そんな有り様です。あとは、英語の勉強を始めたことかなあ……。
https://note.mu/silentsugarman
まあそんなところですね。今はひたすら断酒と英語の勉強に力を注いでいます。
舞子:応援しています。この度はありがとうございました。
影星:こちらこそ有難うございます……なんかややこしい性分なもので、もやもやした気持ちで居るんですが(´・ω・`) こちらも勉強させていただきました。感謝です。