舞子:こんばんは。近江舞子です。さて、今回はゆたさんの二回目、「先週あれ読んだよ」編です。
『南の島のティオ』
- 作者: 池澤夏樹
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 1996/08/06
- メディア: 文庫
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受け取る人が必ず訪ねてくるという不思議な絵ハガキを作る「絵ハガキ屋さん」、花火で「空いっぱいの大きな絵」を描いた黒い鞄の男などの個性的な人々とティオとの出会いを通して、つつましさのなかに精神的な豊かさに溢れた島の暮らしを爽やかに、かつ鮮やかに描き出す連作短篇集。第41回小学館文学賞受賞。
ゆたさんが挙げたここ読んでポイントは、1「小学校高学年の子が読んでも入っていける話」、2「南の島の開放感と同時に寓話的な部分」、3「戦争の傷跡。環境破壊。文明の波など、大人目線でも深く考えさせられる所」でした。今回はどんなお話ができるのでしょうか。
舞子:わたしの感想の前に、まずゆたさんは再読してどうでしたか?
ゆたさん:もっと子供向けだったかななんて思ってたのですか、いつ読んでも素晴らしい内容でした。
舞子:たしかに子どもでもわかりやすい語り口ですが、表現が豊かで、ティオ少年の大人びた一面が垣間見えましたね。
ゆたさん:そうですね
舞子:親の仕事の手伝いをしていたり、ホテルに来た人たちとたくさんのかかわりを持っていたりすることで彼の表現力の豊かさには説得力があると思います。
ゆたさん:初めてのおつかいみたいな(笑) 初めて本読む子供達もそういった大人びた部分の共感ってあると思います
舞子:ここ読んでポイント1、「小学校高学年の子が読んでも入っていける話」に繋がりますね。
ゆたさん:そうですね
舞子:とにかく全編を通じて読みやすかったです。つるつるとのどごしよく入ってきました。
ゆたさん:語り口が優しくて入りやすいですよね
舞子:最初の章の、「絵はがき屋さん」ですぐに入りこめましたね。コレすごくいい! って。
ゆたさん:ですよね
舞子:「少し不思議」が変な感じじゃなく、気持ちよくとらえられました。こんなことあったらいいな、ありそうだなって。
ゆたさん:魔法みたいな(笑)
舞子:サンタクロースの存在のように信じていたい感じ。
ゆたさん:おお! そんな感じです。
舞子:ポイント2、「南の島の開放感と同時に寓話的な部分」に移りましょう。
ゆたさん:はい
舞子:旅行するなら北海道とかヨーロッパとか、涼しいところに行きたいと思っていたけれども、この南国なら行きたい、日焼けしてもいいって思いました。とにかく、どこもかしこも人もみんな魅力的なんです。
ゆたさん:場所もそうですが、登場人物が魅力的。
舞子:子どもたちもそうですけれども、大人たちもいい味だしてますよね。
ゆたさん:個性的すぎます
舞子:少年野球団のためにお金を出してくれたバムさんとか、フィリピンから来たホセさんとか、その彼が会いたかったマリア(エレンナ)さんとか、カマイ婆とか。島民の人に限らず、訪れる人たちも島に魅了されていきますよね。
ゆたさん:やはりただの観光地ではなくて人々が魅力的なんでしょうね。この島に行きたいです
舞子:さて、ポイント3、「戦争の傷跡。環境破壊。文明の波など、大人目線でも深く考えさせられる所」。舞台となる島は、旧日本領だということが明かされていますね。
ゆたさん:そうですね。ホセさんが詳しく話してくれてますね
舞子:「海の向こうに帰った兵士たち」では、遺骨を探しに来る日本人たちが、「草色の空への水路」では、環境破壊に対する警鐘が、「エミリオの出発」では文明と伝統が、それぞれ描かれています。わたしは都会で文明の進んだ場所で暮らしたいと思いますが、エミリオが文明に頼らず伝統的な方法で生きていく様はかっこいいと思います。ああやって暮らしている人たちをけっして馬鹿にしてはいけないな、と。
ゆたさん:自然の中で生きる知恵じゃないですけど、自分達が島に行ったら生きてはいけないですし(笑)
舞子:現代における多文化共生に通じるものがあると思うんです。
ゆたさん:自然と文明のバランスを調整するのは人間なんだよなって思ったりもしました。そういう意味では様々なテーマを色んな角度から読み込んでいける作品ですよね
舞子:そして、最後の最後のあとがきでオチがついていておもしろかったです。蛇足じゃなくて、あそこまで書いて完成しているなあって。
ゆたさん:あれは可愛いですよね。ずるい(笑)
舞子:フィクションに、よりいっそう説得力を持たせるあとがきでした。
ゆたさん:読んで欲しいです:
舞子:はい。初回からたいへん良い作品を紹介していただき、この企画は大成功だなとわたしは思っています。
ゆたさん:初回に呼んでいただきありがとうございました