蝶になったあの日から

乙女心と秋の空 / HEAVY MENTAL HERTZ

 清水マリコ『ゼロヨンイチナナ』、雪葉が弟を亡くしたことを明智に伝える場面より。

「でもね。いつかは、弟がいないことにも慣れて、痛みも消えていくと思うとさみしい。そのほうがいいってわかってるけど、やっぱりさみしい」

 再読したらここにひっかかった。確かに悲しみは忘れたほうが苦しまずに生きられる。でも、大切な人を亡くしたという記憶が悲しみとなって残る。それは、大事なことなのではないだろうか。けしてよくなかった思い出でも。別離が心を痛めつけてもそれを手放したくない。