蝶になったあの日から

乙女心と秋の空 / HEAVY MENTAL HERTZ

ある

 わたしには何もない。ずっと、そう思っていた。
 幼いころから空っぽで、そのくせお勉強に使う情報だけは頭に詰まっていて。
 いつからか「変わりたい」と願っていた。「何者かに成り変わりたい」と。
 ある日、つまずいた。文字通り、起き上がれないほどに。
 もう歩けない。体が悲鳴を上げた。
 そして、やっと見つけた。好きなこと。素敵なこと。
 好きなことをやることは、すなわち楽なことばかりじゃないと知った。
 でも、楽じゃないけれども、それすら楽しめる。今、わたしには「ある」から。