蝶になったあの日から

乙女心と秋の空 / HEAVY MENTAL HERTZ

サイレンより奥から響く

 僕は道を歩いていて交差点近くで救急車もしくは消防車のサイレンの音を聞いたら、横断歩道の少し前で立ち止まります。
 あれは命を運んでいるかもしれないから。なるべく早く速くいかせてあげたいから。
 だから大袈裟に「動きませんよ、どうぞはやく行ってください」という意思表示をするのです。たいして伝わっていないと思いますが。
 でも、救急車が近いのに駆け足で渡ろうとする人、また、救急車が通り過ぎる目の前まで行って立ち止まる人がいる。それを見かけると反射的に「人殺し」と思っちゃうんです。
 救急車が減速するかしないかで変わる時間なんてほんの数秒かもしれません。でも、怪我や急病で乗っている人やその関係者にとっては、どんなに長く感じることでしょう。
 別に過去に自身や身内にそういう体験があったわけではありません。たぶん『め組の大吾』(消防士の漫画)の影響があるんだと思います。
 医師、看護師、消防士等々、人の不幸の時にその才能が花開く、なんとも悲しい宿命を背負った彼ら彼女らの邪魔をしてはいけない。そう強く思うんです。