蝶になったあの日から

乙女心と秋の空 / HEAVY MENTAL HERTZ

遠い鏡

 何かをぼんやり思っていた。僕には伝えたい、広く知ってほしい事があるのだと。共感してほしいとでもいうのだろうか。その表し方がありきたり過ぎて、記すのがこっぱずかしい。そう思って躊躇ってきた。男らしさとか女らしさとか伝統とか文化とかフツーとかジョーシキとか、不思議で不思議で僕にはわからない。しかし、多くの人たちは(我慢をしながらも)、どこかで体系立てて学ぶでもなく当然のように身に着け振舞っている。僕にはわからない。どうしてその規則に沿わなければならないのか。なにも僕はアナーキストではない。秩序を好むほうだ。
 でも、まだ、輪郭が見えない。伝えるには幼すぎる。これから何をして生きればいいのかわからない。やがて尽きるこの体。怠惰な毎日。躁にもなれずただ鬱屈な気持ちをのろのろと書き散らす。
 自己を見つめる。自問自答。これはこれで大切なことだと思う。でも、やっぱりもっと大切なことに気づくとき、そこに尊敬する他者がいた。経験からそう言っている。自分は鏡になり得ない。ただ、尊敬する他者のみが鏡になり得るのだ。
 その他者に近づくのにも恐れをなし、下を向き、終日眠って過ごしている。