蝶になったあの日から

乙女心と秋の空 / HEAVY MENTAL HERTZ

又吉直樹『火花』の感想

 

火花

火花

 

 感想を書くことを一旦躊躇したが、向き合って書きます。

 笑えるという意味で、面白かったです。

 徳永と神谷やりとりは、作者のお笑いの感覚が生きていると思います。

 徳永の思考と神谷の思考。お笑いだけに限らないことを語っています。

 ただ、この作品が芥川賞に値する芸術性があるとは思えませんでした。

「人形の涙」

 彼女は涙を流した。
 この恋はけっして成就しないとわかってしまったから。
 それは、遠くからそっと見守るだけの、しかし、熱い、片思いだった。
 男とは中学生の時分に初めて出逢った。とにかくやさしく、誰にでも分け隔てなく接するところに彼女は惹かれた。
 彼女は自分の容姿がひどく醜いことを卑下していた。そのことでずっと罵られ、蔑まれてきた。その度に歯を食いしばって耐えた。
 そんな中、お構いなしに、いつも微笑んで話しかけてくれる男に、惚れてしまった。彼女の恋という名の生き地獄の始まりだった。
 それから大学を卒業するまで、一緒のキャンパスに通ったが、ついに深い関係を築けずに終わってしまった。顔を合わせば声をかけるが、世間話程度でおしまい。どこまでも奥手な彼女は自分から話しかけることもできない。だが、たったそれだけで、嬉しかった。ただ、満足していたわけではない。もっと、もっと、そばにいたい、近付きたいと願っていた。
 卒業後、人伝に知った。男には恋人がいたらしい。それも中学校の頃から付き合っていて、それから大学を卒業と同時に結婚した、と。
 喪失。敗北。絶望。彼女は北に向かい、本当の地獄へと身を投げた。


 彼女は涙を流した。
 神様は見ていた。彼女を憐れんで、生き返らせてあげようとした。だが、肉体の損傷が激しく、それは不可能なことだった。その代わりに、彼女が大事にしていた青い瞳の人形を魂の容器にして、彼女を生き返らせた。
 もう一度、彼に会えるかもしれない。神様、ありがとうございます。
 彼女の両親は、形見分け、彼女の思い出の品を親しい人々に引き取ってもらった。彼女も喜ぶと思って。中でも青い瞳の人形――彼女――は、一番仲良くしていた女の手に渡った。その女とは、男の妻だった。


 彼女は涙を流した。
 ようやく彼のそばに行けたが、彼女のほうを向いてはくれない。妻に惚気ている彼から目を背けられない。ひび割れるような思いだった。他人の幸せが彼女の不幸せ。祝福できない自分を彼女は呪った。
 神様は、またも彼女の味方をした。悲しみにくれる彼女を見かねて、ある日、女を交通事故で殺してしまった。残されたのは男と、彼の妻が大切にしていた青い瞳の人形。そう、彼女だった。


 彼女は涙を流した。
 これからはずっと二人きりだ。


 男は涙を流した。
 妻を失い、ひとりぼっちになってしまった。葬儀では気丈に振舞っていたが、人のいないところでは嗚咽を漏らしていた。
 そして、男は、妻が愛していた青い瞳の人形を、妻の棺桶に入れた。


 彼女は涙を流した。

「Amazonプライムビデオでこれ見よう」No.2『ピンポン』

近江舞子:「Amazonプライムビデオでこれ見よう」
始まりました。第二回は、アナウンスしていました『ニンゲン合格』を諸般の事情で変更し、『ピンポン』でお送りします。
ここでは、映画鑑賞の道の先輩である踊る猫さんに、後輩である僕、近江舞子が学びながら語り合っていきます。
では、よろしくお願いします。



踊る猫:こんばんは。よろしくお願いします。



近江舞子:さっそくですが、あらすじをざっくりといいので教えてください。



踊る猫:そうですね……卓球で世界一を目指している高校生ペコと、その幼馴染みのスマイルそしてアクマ、強敵のドラゴンとチャイナ。彼らが頂上を目指して努力し、時には挫折も味わいつつ、諦めたりしながらも闘い抜く……というような話、だとざっくりし過ぎでしょうか。



近江舞子:いえいえ、それで大丈夫だと思います。
王道ですよね。



踊る猫:そうですね。俗に言う(個人的にあまり好きな表現ではないのですが)「スポ根」ですね。



近江舞子:まず、キャストの話から。窪塚洋介ARATA井浦新)も中村獅童も若くて、ギリギリ高校生を演じられていましたね。



踊る猫:そうですね。本当にギリギリですね。
2002年の映画なんですね。個人的に特に懐かしさみたいなものはなくて、今でも(卓球はルールは変わったようですが)新鮮に観られると思っています。



近江舞子:はい。僕は、公開して間もない頃に観た記憶があります。元卓球部でしたし、窪塚洋介が出ているということもありまして、興味がありました。



踊る猫:そうなんですね。感想は如何でしたか?



近江舞子:当時は、すみません、覚えていません。
で、今回の感想はと言うと、挫折、成長、ライバルの存在。見事ですね。
スーパーカーの音楽もいいです。



踊る猫:私は音楽が好きなので、その方面についつい関心が向かうんですよ。劇中で使われていたスーパーカーブンブンサテライツ砂原良徳氏など音楽も豪華だと思います。



近江舞子スーパーカーの「STROBOLIGHTS」が大好きなんです。



踊る猫:ペコが再起を掛けてオババから受け取ったラケットで練習するシーンで使われていた曲ですね。



近江舞子:はい。あんまり僕が使う言葉ではないのですけれども、ノリます。



踊る猫:個人的にはやっぱり「YUMEGIWA LAST BOY」が流れるエンディングが良いなと思いました。スーパーカーで私が一番好きな曲だから、というのもあるのでしょう。



近江舞子:映画は、やっぱり総合芸術なので、音楽が良いと魅力が増しますよね。



踊る猫:そうですね。劇場で観てみたかった作品です。映像も綺麗ですし。
個人的には映画に関してはあまり映像に注意が向かない人間なんですよ。どうしてもスジの面白さに拘ってしまうという。その意味ではスジも魅力的なんじゃないかと思います。



近江舞子:映像なり音楽なり台詞なり、何かひとつでも良いところがあれば、僕は楽しめますね。
でも、この作品は、抜群にスジが出来ていると思います。



踊る猫:原作も通して読んだことはあるのですが、脚本を宮藤官九郎氏が担当している。クドカン(これもあまり好きな表現ではないのですが)さんの力量は凄いなと改めて思います。



近江舞子:原作は未読です。脚本が宮藤官九郎氏なのはエンドロールを観るまで気付きませんでした。氏のクセがあまり出ていない気がします。



踊る猫:私は宮藤官九郎氏の作品は『木更津キャッツアイ』と映画『69sixtynine』を観た程度なので偉そうなことは言えないのですが、不良っぽい人を描くのが巧いのかな、と思います。



近江舞子:そうですね。あとは、『池袋ウエストゲートパーク』も。これには、窪塚洋介が出ていて、役がハマって、一躍名を馳せましたね。



踊る猫:そっちは観てないです。今度借りてみます。



近江舞子:今でも、窪塚洋介を語る人は、『池袋ウエストゲートパーク』で止まっている印象があります。



踊る猫:今調べたら2000年の作品なんですね。あの頃の窪塚洋介氏は輝いていたと思います。



近江舞子:作中内でキングというニックネームで呼ばれているのですが、カッコいいです。
『ピンポン』では打って変って、純粋な少年(?)を演じていて、それがまたハマっていて驚きです。



踊る猫:そうなんですね。ペコのあの役はハマり役なんじゃないかと思います。



近江舞子:相方であるスマイルもいいですよね。



踊る猫:ARATA井浦新)氏ですね。ボソボソした喋り方で、クールな人物を巧く演じていたんじゃないかなと思います。



近江舞子:僕が、一番印象に残っているのは、ペコのカッコよさではなく、あの二枚の写真での「スマイル」なんです。



踊る猫:一度目は川に飛び込んだペコがスマイルが笑った時を思い出すシーン、二度目はラスト・シーン近く、で良いでしょうか?



近江舞子:たしか、そうです。
スマイルを笑わせることができるのは、ペコなんだなあと思うと同時に、スマイルが報われてよかったと思うのです。



踊る猫:共感します。わざと負け続けて来たスマイルのことを考えると報われて良かったな、と。あと個人的に今回観直してみて一番印象に残ったのは、ペコがアクマに負けて落ち込んでいる時、スマイルがそれを本当に悲しそうな表情で見るんですね。カッコ悪いペコを見るのが嫌いだ、って言ってるスマイルだからこちらもなんとも言えない気持ちになるんです。



近江舞子:その点は見逃していました。



踊る猫:私も今回観直してみて気づいたんです。良く出来た構成だな、と思いました。



近江舞子:全体的に小難しいことを考えさせられずに観られて、僕としては助かりました。



踊る猫:そうなんですよね。私も小難しいことを考えながら映画を観るのはあまり好きではないので、エンターテイメントの王道という印象を抱きます。
ちょっと問題発言だったかな。深い映画でもあると同時に分かりやすい……そういう意味で言ったんです。単純な映画でもあり、なおかつ奥が深いという。



近江舞子:複数回の鑑賞に堪えられる作品ということですね。



踊る猫:そういうことです。個人的には最近挫折を味わうことがあったんですね。自分に才能がないことをつくづく思い知らされるという……だから今回の鑑賞ではアクマに感情移入してしまいました。



近江舞子:主要キャスト五人に「人生」を感じましたね。



踊る猫:そうですね。どの人物にも感情移入出来ると思います。



近江舞子:そろそろ締めに入りましょうか。



踊る猫:そうですね。今回は私が薦めた作品を観ていただいたことになるのですが、近江さんとしては満足されたようでホッとしています。



近江舞子:昔はわからなかったことが、今になってわかり、そして語り合えて、嬉しく思います。



踊る猫:私も、また人生の曲がり角に立った時に観直してみたい……そう思いました。



近江舞子:さて、次回。僕の提案の番でして、何にしようかと迷いました。
M・ナイト・シャマラン監督作品『ヴィジット(字幕版)』にしようかと。



踊る猫:良いですね。私も気になっていた作品なので、この機会に観てみたいです。



近江舞子:実は、まったくこの方に関して知らないのですが、Twitterのフォローさんが熱心なファンなので、一度観てみようかな、と。



踊る猫:ブルース・ウィリスが主演した『シックス・センス』で有名ですね。



近江舞子:それもピンとこないですね。無知で申し訳ない。



踊る猫:私も大して知らないのでw 観てみたいです。



近江舞子:では、また(なるべく)一か月後に語り合いましょう。



踊る猫:今日は有難うございました。



近江舞子:ありがとうございました。

嶽本野ばら『落花生』の感想

 

 

落花生

落花生

 

 

 

僕がしなければならないのは、薬物への渇きを断ち切る作業ではない。欲しいと思いながら、恥ずかしくない方法で生き延びていくことです。(帯より)

   野ばらちゃん、今度こそ深く反省しているなあとは思いつつも、この人のことだから、またやってしまうかもしれない。

  それでも、僕は彼の才能を信じている。

  どこまでもついていく。

  何度裏切られようとも。

Mötley Crüe 『Girls, Girls, Girls』

 

ガールズ、ガールズ、ガールズ+5

ガールズ、ガールズ、ガールズ+5

 

  Elvis Presley「Jailhouse Rock」のカヴァーと「Wild Side」が聴きたくて買いました。

 なんか、最近、ヘヴィメタルに餓えているのですよ。

 やっぱり、Mötley Crüe。

 My Favorite Most Infamous Band !

「シン・ゴジラ」と「君の名は。」と

  TwitterのTLで、両者共に語る人の熱が高かったので、観に行きました。

  両者違って、共に良い。

シン・ゴジラ」は、面白い。「君の名は。」は、涙、涙、涙。

  もう一回ずつ観たいです。