蝶になったあの日から

乙女心と秋の空 / HEAVY MENTAL HERTZ

白い手を

 誰もが手を差し入れて低い温度を確かめたくなるような、澄んだ湧水の溜まりを見つけた。水を湛える古びたコンクリートの囲いは汚ならしさを感じさせない苔でびっしり色付けされ、水の青さを栄えさせている。
 この周りでは春が来てタンポポが咲き、夏が来て虫が跳ね、秋が来てススキが揺れて、冬が来て落ち葉が泳ぐ。湧水の前に立って耳をそばだてていると、そんな四季が聞こえてきた。三月の暖かい日だった。