蝶になったあの日から

乙女心と秋の空 / HEAVY MENTAL HERTZ

『深淵』の感想を松尾憂雪様から頂きました

 以下、引用します。

嶽本野ばらさんと、太宰治さんが好きと伺いました。
本作「深淵」は其の意志を貫いた作に思えました。
甘美でどす黒い、人間の深淵を描く、と云う文芸作になったと思います。
どちらも謎のある作で、其等は読者には良いスパイスになったと思います。


罪の香りは芳ばしく、について
主人公の出生の謎と、行動動機の謎と、二つが程好く混ざった感じが致しました。
何処までも幽かな主人公が、罪に飲まれ飲み込まれる、享楽のある作と思いました。
前回亡骸が短編の幻想集の如き作集でしたから、長い作を楽しむのも良いと感じました。
私が思うに、太宰治の作風は、語り、だと思います。
近江さんの作風にも美文はありますね。
情景を上手く描いていて、ヴィジョニカルであると感じました。
内容をグロテクスに描かない所が、主人公の性格であると思えましたが、少しアッサリと書いていると思いました。
炎、月影、教会は印象的でした。


たったひとり について
美しき主人公は同じですが、謎が相手に傾く、と云うのは面白く読めました。
唯、感情の揺れが、やや、淡白に描かれている気がしました。
素っ気なくて、孤独な青年、其は描けていると思いました。
人物が描ければ、良しと私は考えます。
世界の終わりという名の雑貨店」や「カフェー」のシリーズにある、ヤンワリとした影、は近江さんに合っている気が致します。
徹底した写実、と云うのは無いので、描いても良いと感じましたが、ストーリーを読ませるには、ある程度仕方ないのかも知れません。
でも、書こうと思えば書ける余地、が残っている気が致しました。
文章に個性が滲む人は、結構好き勝手に書いても良い、と私は考えます。

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