蝶になったあの日から

乙女心と秋の空 / HEAVY MENTAL HERTZ

「ゴシックサーカス」

 目の粗く不均等なノイズが揺れた。震えた。次第に姿を現したのはピアノで温かに奏でられる、天国の扉をそっと叩くようなガブリエル・フォーレの『シシリエンヌ』。どんなアルコールよりも強い陶酔が僕の胸にもたらされた。そう。今宵も幕が開ける。
「こんばんは。パーソナリティーの樹海です。始まりました。樹海『ゴシックサーカス』。午前零時にまたここで会えましたね。一週間、このときをずっと待っていました。あなたはどうでしたか。それでは今夜も乙女なクラウン、道化のわたしがあなたを電波のサーカスにお連れ致します」